股関節の悩み~脚の付け根の痛みについて

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股関節の悩み~脚の付け根の痛みについて

「股関節が痛い」「股関節が動かしにくい」といった、股関節の悩みを抱える方は多くいらっしゃいます。
その原因の中には、股関節の疾患によるものが少なくありません。
股関節のしくみ
「股関節」とは、両脚の付け根に位置する関節のことをいい、腰の骨盤と太ももの大腿骨を繋いでいる重要な関節です。
大腿骨の先には「大腿骨骨頭」と呼ばれるボールの形をした骨が付いており、骨盤側の「臼蓋」と呼ばれる骨頭の受け皿によって、うまく組み合わすことができる「球関節」になっています。
そのような構造のために、前後・左右さまざまな方向に動かすことができるようになっている特徴を持っています。
正常な関節の場合には、大腿骨骨頭の約4/5程度を、骨盤の「寛骨臼」と呼ばれる部分によって包み込むようになっているために安定した動きが可能です。
また普通に歩いていても、股関節には体重の数倍もの負荷がかかっていると言われていますが、その力を支えられるように筋肉や腱などによって全体を覆っているのです。
私たちの生活動作で多くみられる正座やしゃがむ動作など、複雑な動きを行っても安定性を確保できるような構造になっています。
股関節の機能を正常に保っておくためには、関節への負担を極力減らしながら、筋力を落とさないように適度な運動に取り組んでおくことが大切です。
しかし、筋力が低下し関節内部にある軟骨がすり減ってしまうと、股関節に痛みが生じるようになり、関節が変形して動かしにくくなったり、日常生活動作に不自由を感じたりするようになります。
股関節の痛みの原因は
- 変形性股関節症
- 大腿骨頭壊死
- 関節リウマチ
- 大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI症候群)
歩いたり、階段の昇降をしたりすることによって、脚の付け根やお尻の周辺などに痛みが生じることがあります。
そのような悩みを抱えている方の中には、変形性股関節症をはじめとして、さまざまな原因が考えられます。
痛みの初期の段階では、安静にすることによって痛みが治まることも多いですが、そのまま放置しておくと筋力が低下し、さらに悪化してしまうこともあります。
そのため、痛みが生じた場合には早めに病院に受診して、適切な治療に取り組むことが大切になります。
股関節痛を引き起こす疾患として代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
変形性股関節症
「変形性股関節症」とは、関節内にある軟骨がすり減ってしまい、股関節の大腿骨骨頭と臼蓋が変形することによって、痛みが生じ、動かしづらさ、両脚の長さの違いなどを生じさせる疾患です。
加齢によって軟骨がすり減ってしまうことや肥満によって体重が負担となることが、症状を発症させる大きな要因になると考えられています。
また、生まれつき大腿骨骨頭の受け皿となる部分が浅い「寛骨臼形成不全」の場合では、加齢によって負担が生じることによって引き起こしやすいと言われています。
大腿骨頭壊死
「大腿骨頭壊死」とは、大腿骨骨頭の血流が何らかの原因によって途絶えてしまって、壊死した状態となってしまい、骨が損傷してしまう疾患です。
骨が壊死してしまうと再生することはありません。
そのため、骨が壊れてしまったり、骨折してしまうことによって、股関節に痛みが生じるようになり、歩けなくなることもあります。
大腿骨頭壊死の原因が判明しているタイプを「二次性大腿骨壊死症」と呼んでおり、はっきりしないタイプを「突発性大腿骨頭壊死症」と呼んでいます。
関節リウマチ
「関節リウマチ」とは、免疫の異常によって関節が炎症を起こし、股関節内の軟骨や骨が損傷し、痛みや腫れ、こわばりなどを生じさせる疾患です。
激しい痛みを伴うことが特徴で、進行すると関節を動かさなくても痛みが生じるようになります。
そのまま放置しておくと、関節がどんどん変形してしまう特徴を持っています。
大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI症候群)
「大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI症候群)」とは、サッカーなど股関節を曲げたりひねったりするようなスポーツによくみられる症状で、大腿骨骨頭と臼蓋がぶつかることによって軟骨に痛みが生じる疾患です。
股関節内にある軟骨を損傷し続けていると、変形性股関節症の原因になると考えられています。
股関節の動きにはお尻の筋肉のストレッチが効果的

股関節痛でお悩みの方には、股関節が硬くなっていることが多く、股関節痛の原因になっている可能性があります。
そのため、股関節周辺の筋肉をストレッチすることによって股関節に柔軟性を取り戻すことができ、痛みを和らげることができます。
股関節に影響を与えている筋肉は臀部にある筋肉で、「大殿筋」「中殿筋」「小殿筋」と3層構造になっていて、股関節にかかる力を支えています。
「大殿筋」とはお尻の筋肉の中でもっとも大きいもので、股関節の曲げ伸ばしや脚を後ろに送り出す動作、太ももを回す動作などが主な働きとなっています。
「中殿筋」は、お尻の上部に位置している筋肉で、股関節を外側に開く動作に影響を与えていると知られています。
「小殿筋」も中殿筋と同様にお尻の上部に位置していますが、深層にあるのが特徴となっています。3つの層の中ではもっとも小さな筋肉ですが、脚のバランスをとるために重要な働きを担っています。
これらの筋肉を意識してストレッチやマッサージに取り組んでおくことによって、股関節の柔軟性を取り戻すことができるようになります。
筋力を低下させない適度な運動が大切
股関節痛の初期症状においては、消炎鎮痛剤などによって痛みを緩和させながら、運動療法によって股関節を支える筋力の向上に取り組んでいきます。
変形性股関節症をはじめとして、股関節痛を発症させる原因として、加齢による筋力低下や肥満による関節への負担が関係していると考えられています。
運動不足によって筋力低下がみられると、股関節にかかる体重を筋力によって支えきれなくなってしまい、股関節内の軟骨がすり減ってしまうのです。
また同様に、肥満によって股関節への負担がとても大きくなることがあり、さらに運動不足で股関節周辺の筋力が低下すると、急速に症状を悪化させてしまうことになります。
そのため、そのような悪循環を起こすことがないように、医師や理学療法士の指導の下に、運動療法に取り組まれることが多くなっています。
股関節手術治療について
- 骨盤骨切り術
- 人工股関節置換術
股関節に対する手術治療には、上記2つの方法があります。
「骨盤骨切り術」とは股関節の損傷が進んでいない場合に選択される手術治療です。
自分の関節を温存させることができる方法であり、「内反骨切り術」「外反骨切り術」「骨盤骨切り術」といった種類があります。
骨盤や大腿骨の骨の一部を切り取って、人為的に変形させることによって関節の機能を回復させていきます。
日常生活動作が制限されるようなことはありませんので、回復すればスポーツも可能となります。
「人工股関節置換術」とは、股関節の損傷部位を取り除いて、人工関節に置き換えるといった手術治療です。
人工股関節は、「ソケット」と呼ばれる金属製の受け皿、骨頭部分の「ボール」、ボールを支える「ステム」と呼ばれる部分によって構成されています。
手術によって股関節の痛みを失くすことができ、安定した歩行を取り戻すことが可能です。
変形性股関節症のセルフチェックの方法

- 歩きはじめに股関節の音が鳴る
- 股関節の曲げ伸ばしがしにくい
- 階段の昇降がしにくい
- 足の爪が切りにくい
- 左右の脚の長さが違い歩くと左右に揺れる
- 痛みで日常生活に支障がある
変形性股関節症の場合には、上記のような症状が現れることがあります。このような症状が現れている場合には、早めに受診するようにしましょう。
歩きはじめなど、動作の初動において股関節の骨が鳴ることが多くなります。
これは股関節に変形が生じていることが考えられ、変形性股関節症の初期症状においてよくみられるものとなっています。
生活動作の中でも、さまざまな点において動かしにくさを感じられるようになります。
股関節の曲げ伸ばし、階段の昇降、足の爪切りの動作など、股関節を使うようなシーンにおいて違和感を感じられるようになります。
また、変形が進んでくると脚の長さに違いがみられるようになります。
左右に大きく揺れる場合には、かなり変形が進んでいるものと考えられます。また椅子に座った際に、無意識に足を組んでバランスをとろうとすることもあります。
また、動作時には痛みが生じ、歩行することが苦痛になるような場合もあります。
このような症状は、日常生活において少しずつ現れるものですから、普段から意識しておくようにしましょう。