ひざが腫れる病気と治療方法~変形性膝関節症と大腿骨顆部骨壊死の始まり方

ひざが腫れる病気と治療方法~変形性膝関節症と大腿骨顆部骨壊死の始まり方

ひざ関節は、日常的に私たちの体を支えており、歩行や運動など、日常生活においてとても重要な関節であると言えます。
しかし、仕事で立ち仕事だったり、家事で足を使いすぎたり、スポーツなどでケガをしたりすると、ひざに痛みが生じ腫れてくることがあります。
ひざの痛みや腫れに多い病気は「変形性膝関節症」であり、そのまま悪化させてしまうと「大腿骨顆部骨壊死」を引き起こしてしまうこともあります。
ここでは、ひざ関節のしくみについてお伝えし、なぜ腫れや痛みが生じるのか、変形性膝関節症や大腿骨顆部骨壊死はどのような病気なのかご説明していきましょう。
ひざ関節のしくみ
ひざ関節は、いくつもの骨によって構成されている関節で、それらの骨を筋肉や靭帯、腱で支えており、関節内にある軟骨によってクッションの役割を果たしています。
太ももの大腿骨、脛内側の脛骨、脛外側の腓骨、ひざのお皿である膝蓋骨からひざ関節が成り立っています。
関節面においては軟骨があってツルツルしており、腓骨の平らな関節面で大腿骨が転がるように動いて、ひざを曲げたり伸ばしたりできるようになっています。
ひざ関節には外側側副靭帯や内側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯、膝蓋腱といった靭帯や腱によって支えられています。
曲げたり伸ばしたりといった動作をスムーズに行うために、大腿四頭筋、大腿二頭筋などといった筋肉でサポートしています。
さらに、ひざ関節の外側と内側に半月板と呼ばれる軟骨があり、関節全体は関節包と呼ばれる線維によって包み込んでいます。
ひざの腫れや痛みの主な原因
・変形性膝関節症(へんけいせい しつかんせつしょう)
・大腿骨顆部骨壊死(だいたいこつ かぶこつえし)
ひざの腫れや痛みにはさまざまな原因がありますが、その中でも多くみられるのが「変形性膝関節症」と「腿骨顆部骨壊死」です。
変形性膝関節症は加齢に伴って生じることがほとんどで、特に中高年の女性や肥満体系の方に多くみられます。
ひざ関節周辺の筋肉が衰えてしまうことによって、体重を支えることができなくなってしまい、大きな負担となって腫れや痛みが生じてしまいます。
また腿骨顆部骨壊死も多くみられる症状です。
中高年、特に60歳以上の女性に多くみられる症状で、歩いているときにひざに激痛を感じ、発症してしまうということが珍しくありません。
変形性膝関節症の経過中に合併してしまうこともありますので、注意すべき病気であると言えるでしょう。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは、ひざ関節内の軟骨がすり減ってしまうことによって、骨と骨がぶつかりあってしまい、激痛を生じさせる病気です。
そのまま悪化させてしまうと、ひざに水が溜まって腫れてきたり、変形を生じさせてしまうこともあります。
初期症状には座っている状態から立ち上がったり、歩行を始めようとしたり、階段の上り下りの際などにおいて、痛みや違和感となって現れます。
安静にしていることで症状が治まることが多いので、この時期に治療に訪れる方はとても少なくなっています。
しかし、徐々に症状が悪化するにつれて痛みの頻度が多くなってきて、ひざ関節に水が溜まってしまう水症によって腫れがみられるようになります。
ひざの曲げ伸ばしが不自由になってしまい、正座ができなくなってしまいます。
ひざ関節内の軟骨がすり減ってしまうことによって変形を生じさせ、さらに進行するとO脚(内反変形)になることもあります。
大腿骨顆部骨壊死とは
大腿骨顆部骨壊死とは、太ももの大腿骨の内側にある顆部(かぶ)と呼ばれる部位に骨壊死が生じる病気です。
発症初期の段階には、耐えがたい激痛が生じることがあります。
関節内の内顆(ないか)と呼ばれる丸みのある部位が、骨壊死を起こして陥没していることが分かります。
ただ、発症後の1~2か月程度ではレントゲン検査でそれほど変化が現れないことも多く、激痛など特有な症状が見られない場合においては、変形性膝関節症と見分けがつかないこともあります。
症状が進行し関節面が陥没を起こすことによって、関節のすき間がどんどん狭くなってしまい、ひざ関節が変形してしまうことも見受けられます。
大腿骨顆部骨壊死は、明らかな原因がない特発性と呼ばれる状態のことが多くなっています。
加齢によって骨がもろくなっている状態でひざに負担をかけたり、軽微な骨折が起こっていることが原因であると考えられています。
変形性膝関節症の症状の進み方と治療方法

変形性膝関節症は初期症状ではひざの違和感程度から始まりますが、そのまま放置して悪化させてしまうと、激痛が生じたりひざに変形がみられるようなこともあります。
自身のひざにどのような症状が生じているのか自覚し、早期に適切な治療を行うようにしましょう。
症状はひざの違和感から
変形性膝関節症の初期症状においては、意識していれば「あれっ」という違和感によって気付くことができます。
特に起床時の起き上がりや動こうとしたときなどに、何となくひざにいつもと違った感覚を覚えるのです。
歩き始めの際にこわばりを感じたり、痛みを感じるようなこともあります。
しかし、この状態はそれほど長続きするものではなく、痛みが生じても少し安静にしていると治まることがほとんどです。
そのため、この時期に受診に訪れる方はそれほど多くはありません。
また、症状の現れ方や進行は人によってさまざまで、それほど痛みが現れることなく、こわばりのように違和感だけが続くということもあります。
安静にしても症状が治らなくなる
初期症状では痛みや違和感が生じても、安静にしていることだけでも改善させることができます。
しかし、そのまま放置して悪化させてしまうと、安静にしても症状が治まらなくなってしまいます。
最初は違和感だけだったのに、明らかに痛みとして認識できるようにもなり、徐々にひざが曲げ伸ばしづらくなってきます。
日常生活において、正座がしにくくなったり、階段の昇降がしづらくなってしまうのです。
またひざ周辺が腫れてきたり、水が溜まって浮腫んでくるような症状が現れるようになり、重だるい感じに悩まされるようにもなります。
炎症が生じていますので、熱感を伴っていることもあります。
この時期には、ひざ関節の変形がみられ、少しずつO脚気味になったり、ひざ関節を動かすと骨同士がぶつかる音を感じるようにもなります。
痛みがひどい…日常生活に大きな支障が
変形性膝関節症をそのまま悪化させてしまうと、安静にしても痛みが治まらないどころか、痛みによって日常生活に大きな支障を来すようになります。
ひざ関節の変形の程度も大きくなってしまい、外見的にもはっきりとO脚が分かるようになります。
この時期には外出することが少しずつ困難となり、買い物をしたり、家事をしたりすることができなくなってしまいます。
自身が思うような活動ができないためにストレスになってしまい、うつ症状が現れてしまうこともあります。
また、引き篭もったままの生活になってしまうことによって刺激がなくなり、認知症を引き起こす原因になることもあります。
変形性膝関節症の治療方法
- 日常生活指導
- 運動療法
- 薬物療法
- 装具療法
- 手術療法
変形性膝関節症の主な治療方法として、上記のものが挙げられます。
ひざの痛みや腫れに悩む方は、中高年や太っている方に多くみられるため、肥満の改善や運動療法による筋力アップなどに取り組んでいくことが中心です。
痛みが現れているような場合には、塗り薬や湿布薬、消炎鎮痛剤の服薬などによって痛みの緩和に取り組みます。
また痛みが強く現れているような場合には、ヒアルロン酸注射が選択される場合もあります。
日々のひざに対する負担軽減のために、装具やサポーター、テーピングなどが使用されることもあります。
それらの治療法は「保存療法」と呼ばれるものですが、それでも症状が緩和しない場合には、外科的治療が選択されます。
手術療法には、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節手術などがあります。
大腿骨顆部骨壊死の症状の進み方と治療方法

大腿骨顆部骨壊死とは、60歳以上の女性に多くみられる症状で、ひざ関節を構成している太ももの大腿骨の先端にある顆部と呼ばれる部位が骨壊してしまう病気です。
関節の一部が陥没を起こすことによって、激痛を生じさせてしまいます。
安静にしていても強い痛みに悩まされますが、痛みが生じないような場合には変形性膝関節症と見分けがつかず、見逃されてしまうこともあります。
どのような症状が現れて進行していくのか、またどのような治療方法が選択されるのかご紹介していきましょう。
症状の進み方
歩いているときに突然ひざに激痛を感じたり、安静にしているときの持続的な痛みによって症状に気付くことが珍しくありません。
ただ、強い痛みは初期症状であり、痛みは少しずつ改善していくこともあります。
60歳以上の高齢の場合であれば骨がもろく弱くなっていることも多く、症状に進行がみられると、関節面がどんどん陥没を起こすようになります。
すると、関節のすき間が狭くなり、ひざがまっすぐ伸びなかったり、関節の動きが悪くなってしまったりし、末期にはひざ関節が変形してしまいます。
また、変形性膝関節症の経過中に合併してしまうことが多くみられています。
レントゲン検査でははっきりと症状が現れないことも多く、変形性膝関節症と見分けがつかないことも珍しくありません。
大腿骨顆部骨壊死の治療方法
大腿骨顆部骨壊死の治療方法は、壊死している部位が小さい場合であれば、外科的な手術をせずに保存療法が行われます。
自宅で行えるような運動療法を行いながら、リハビリテーションに取り組んでいきます。
また、外出時などにひざへの負担を軽減するように、靴の中に入れる中敷き(足底版)が指導されることもあります。
痛みが強い場合には、湿布や服薬など消炎鎮痛剤や鎮痛効果のある注射が用いられます。
壊死を起こしているからと言ってすぐに手術することはありません。
さまざまな治療を行っても改善が見られないような場合においては、高位脛骨骨切り術(HTO)や人工膝関節置換術が選択されるようなこともあります。