慢性的な膝裏の痛みを改善したい~その原因や変形性膝関節症の治療について

慢性的な膝裏の痛みを改善したい

膝の痛みに悩む方は少なくありません。
加齢とともに膝の痛みが始まり「歳のものだから…」と諦めている方も多いのではないでしょうか。
また、膝全体の痛みだけではなく「膝の裏」の痛みに悩む方も多くいらっしゃいます。
ここでは、膝裏の痛みとはどのようなものなのか、どのような病気があり、どのように治療すればいいのか、詳しくお伝えしていきます。
「慢性的な膝裏の痛み」とは
膝は私たちの身体を支え、歩いたり家事をしたりするための重要な関節です。
そのため、使いすぎてしまったり、加齢によって筋力が衰えることによって、痛みが生じることがあります。
痛みの部位を確認すると、膝の裏に生じているケースがあります。
足を延ばしたり、歩いたりといった、膝に負担をかけることによって、痛みを感じるのが特徴です。
また膝の裏を触ってみると、腫れたり浮腫んだりしている感じがすることもあります。
動かすことによって痛みが生じますが、安静にすることで痛みや腫れが治まる場合があります。
ただし、痛みの元となっている根本原因を取り除かないと、症状が悪化してしまうことがあります。
悪化してしまうと、寝ているような安静にしている場合でも改善しないことがあり、人工関節置換術の手術が必要となる場合もあります。
そのため、痛みや腫れがみられる場合には、早めに受診するようにしましょう。
慢性的な膝裏の痛みやむくみはリンパが原因?
膝痛に多い原因は、使いすぎや加齢などによって、膝関節内の軟骨がすり減ってしまうことが指摘されています。
特に加齢によって膝周辺の筋力が低下してしまうと、膝のサポート力が弱くなってしまい、膝に負担がかかってしまうのです。
しかし、むくみを伴うような場合には、リンパが原因であることがあります。
みなさんの中にも、立ち仕事やデスクワークなどで同じ姿勢で長時間過ごしている間に、脚がパンパンにむくんでしまうという方は多いのではないでしょうか。
このような脚のむくみは、膝裏にある膝窩リンパ節が詰まってしまうなど、リンパ液の流れが悪くなっていることがあります。
リンパ液は、細菌や異物が体内に入らないようにする免疫機能と、身体の老廃物を運搬して回収・除去する機能を持っています。
そのリンパ液を通る管がリンパ管であり、リンパ管の中には老廃物を除去するためのリンパ節があります。
そのリンパ節は膝裏にもあり、詰まってしまうことによって膝の疲労を感じやすくなってしまい、むくみや痛みの原因となってしまうのです。
慢性的な膝裏の痛みの原因

・変形性膝関節症
・ベーカー嚢腫(のうしゅ)
・半月板損傷
・膝窩筋腱炎
膝裏の痛みにみられる原因にはさまざまなものが考えられますが、上記4つのケースが多くみられます。
一時的に痛みが生じるような場合には、安静にしていたり、ストレッチすることによって痛みが改善する場合もありますが、慢性的に痛みが続くようであれば受診をおすすめします。
変形性膝関節症~膝裏の筋肉やふくらはぎが硬くなり痛みが
膝裏に痛みが出る症状において、代表的なものに「変形性膝関節症」があります。
変形性膝関節症とは、膝関節の内部にある軟骨が摩擦などによってすり減ってしまい、骨同士がぶつかり合うようになって強い痛みが生じる病気です。
初期症状では安静にしていれば痛みが治まることもありますが、加齢によって症状が慢性化し、歩行が困難になってしまうケースもみられます。
変形性膝関節症では初期症状において、「伸びない」「曲がらない」といった伸展制限がみられる場合があります。
その状態をそのまま放置しておくと、膝裏の筋肉やふくらはぎが緊張して硬くなってしまい、膝裏に痛みが生じるようになることが少なくありません。
ベーカー嚢腫(のうしゅ)~膝裏の滑液包に炎症が起こり痛みが
ベーカー嚢腫とは、膝裏にある滑液包に炎症が発症し、腫れてくるという病気です。
滑液包とは膝の裏にある関節液(滑液)を含んでいる関節を囲んでいる袋状の被膜のことを言います。
この滑液包があることによって、関節にかかる負担を軽減させることができます。
膝裏には、この滑液包がいくつも存在し、摩擦や圧迫によって炎症を引き起こして痛みや腫れを生じさせます。
変性性膝関節症をはじめとして、膝の使いすぎや関節リウマチなどが原因になると考えられています。
放置しておくと痛みや腫れがどんどんひどくなってしまい、滑液包が破裂してしまうこともあり、破裂してしまうと急激に痛みが強くなってしまいます。
半月板損傷~半月板の損傷部位によっては膝裏に強い痛みが
半月板損傷とは、膝関節の内部にある半月板が、外部からの衝撃や圧力によって損傷を受け、強い痛みや腫れ、関節の可動域制限などが生じるものです。
サッカーやバスケットボールなどのジャンプなどを要するスポーツに多くみられる症状で、半月板の損傷個所によっては、膝裏に強い痛みがみられることがあります。
半月板は、三日月形になっていることからそのように呼ばれており、膝の内側と外側に2枚あり、膝を安定させたりクッションの役割になったりして膝の負担を軽減しています。
しかし、大きな力や衝撃がかかってしまうことによって、膝の靭帯を損傷するとともに、半月板も損傷してしまうことが多いのです。
一般的にはスポーツによるものが多く、交通事故によって外部から強い圧力がかかったような場合にもみられます。
膝窩筋腱炎~膝の裏側全体に痛みが
膝窩筋腱炎とは、大腿骨下端の外側面から脛骨上端の中央まで伸びている「膝窩筋腱」に炎症が起きて、膝裏に痛みが生じるというものです。
発症すると、膝に負担をかけた状態において、膝の裏側全体、もしくは膝の外側後方に強い痛みが生じます。
膝窩筋とは、膝の曲げ伸ばしの際に働く筋肉のことであり、膝窩筋腱とはこの筋が骨に結合している部分を指しています。
膝を安定させるために重要な部位ですが、バスケットボールやバレーボールなどジャンプが必要な運動によって膝に負荷をかけた際に発症します。
またランニングによって膝を酷使し続けることによって発症することもあります。
変形性膝関節症の症状・検査・治療方法について

膝裏の痛みや腫れに多くみられる症状に「変形性膝関節症」があります。
中高年の女性に多くみられる症状で、歩きはじめや階段の昇りはじめなどに痛みが生じます。
関節内の軟骨がすり減ることが原因であると考えられており、我慢し続けていると歩けなくなってしまうこともあります。
症状
初期症状においては、歩きはじめ、階段の昇りはじめ、椅子から立ちあったとき、長く歩いたときなどに痛みを感じるようになります。
ただ、この時期には安静にしていれば痛みが治まることも多いために、受診せずに我慢してしまう方が多くいらっしゃいます。
しかし、そのまま放置している場合に悪化してしまうことがあります。
歩きはじめだけではなく、歩行時に必ず痛みを感じるようになり、膝の曲げ伸ばしだけでも辛く感じてしまいます。
膝に水が溜まることもあり、徐々に膝関節が変形してO脚が進行します。
この頃になると安静にしていても痛みを感じるようになり、痛みで眠れないようなこともあります。
検査
まず問診によって、膝にどのような痛みがあるのか、自覚症状について確認します。
そのうえで関節可動域や痛み、腫れ、変形の程度などをチェックし、エックス線検査を行います。
エックス線検査では、骨と骨のすき間が狭くなっていないか、「軟骨下骨硬化」によって軟骨の下が硬くなっていないか、「骨棘」と呼ばれるとげ状の骨などを確認します。
初期の段階においてはエックス線検査で異常が見られないこともあるため、MRI検査や関節液検査、血液検査などが行われることもあります。
それらの検査によって、半月板損傷や関節リウマチなどが見つかることもあります。
検査結果によって変形性膝関節症と診断された場合には、進行度に分類されて適切な治療に取り組むことになります。
治療方法~保存療法・手術療法
変形性膝関節症の治療方法には、大きく「保存療法」と「手術療法」に分けることができます。
保存療法は、生活を見直すことによって改善を図るもので、生活指導や運動療法をはじめとして、必要に応じて薬物療法や装具療法も組み合わせていきます。
変形性膝関節症では膝の痛みのために身体を動かさなくなり、運動不足によって膝の筋力が低下し、さらに膝への負担が増えて悪化してしまいます。
そのため、体重をコントロールしながら、運動療法に取り組み筋力の強化を図ります。痛みが強い場合には、薬物で痛みをコントロールしたり、装具で負担を軽減させます。
保存療法に取り組んでも、十分な効果が見られない場合においては、手術療法が選択されることがあります。
変形性膝関節症に対する手術には、「関節鏡視下郭清術」「高位脛骨骨切り術」「人工膝関節置換術」と呼ばれるものがあります。
「関節鏡視下郭清術」とは、半月板損傷などが原因となっている場合に、痛みの原因を部分的に切除するような手術です。
「高位脛骨骨切り術」とは、脛骨の一部を切除してO脚を矯正し、体重の負担のバランスを良くするための手術です。
「人工膝関節置換術」とは、痛みの原因になっている関節を切除し、人工関節に置き換える手術になります。
膝関節と股関節の関係・治療について
変形性膝関節症を抱える方々は、膝痛と共に股関節の痛みについても訴えられることが少なくありません。
膝関節と股関節には大きな関りがあります。
股関節に異常が生じ、膝関節に痛みが出ることがありますし、膝関節の変形から股関節の痛みに発展することもあります。
そのため、変形性膝関節症の治療に取り組むと同時に、股関節に対しても治療が必要なケースもあります。
そのため、膝関節に何らかの症状がみられる場合には、膝だけではなく足全体の関節について治療を検討していく必要もあるのです。
膝関節だけではなく、股関節に対しても違和感が生じているような場合には、受診時に相談するようにしましょう。